セント・ジェームズ・スクールとは

セント・ジェームズ・スクール(Saint James School/SJS)は1842年に創立された歴史ある共学制のエピスコパル系ボーディングスクールである。メリーランド州西部ハガースタウンに位置する800エーカーの広大なキャンパスを有し、8年生から12年生までを対象とした大学進学準備教育を提供している。学生数235名の小規模コミュニティを特徴とし、75%が寮生、25%が通学生という構成比を持つ。30ヶ国20州から集う多様な学生構成と95%の教員居住率が特徴的で、7:1という低い学生教員比率と平均11名のクラス規模が個別指導を可能にしている。

教育理念と哲学的基盤

エピスコパル伝統に根差した人格形成

創立以来180年にわたり維持されてきたエピスコパル(英国国教会系)の価値観が教育の基盤を形成している。礼拝と宗教的実践を通じて「信仰(faith)」「尊敬(respect)」「感謝(gratitude)」「包括性(inclusivity)」の4つの核心価値を涵養するプログラムが特徴的である。週次の礼拝参加が義務付けられており、特定宗派に偏らない普遍的な道徳観の育成を目指す。

グローバル・シチズンシップの育成

30ヶ国からの留学生受け入れと20州に及ぶ国内学生の多様性が特徴12。文化間対話プログラム(Intercultural Dialogue Program)を必修化し、週2回の多文化ワークショップを実施。2018年導入の「グローバル・リーダーシップ・サミット」では模擬国連形式のディベート大会を年次開催している。

学術プログラムの構造と特徴

カリキュラム設計原理

リベラルアーツ教育を基軸にSTEM分野との統合を図る「古典的学問現代化カリキュラム」を採用。9-10年生で人文科学・自然科学の基礎を広範に学び、11-12年生で専門性を深化させる縦断型設計が特徴的である。AP(Advanced Placement)16科目を含む大学レベル科目を提供し、2024年度には35%の生徒が3科目以上のAPを履修している。

特色ある教育手法

7:1という低い学生教員比率を活かしたソクラティック・メソッド(問答法)を全教科で導入。数学授業では「反転授業(Flipped Classroom)」モデルを採用し、授業時間の60%を問題解決型グループワークに充てている。文学授業ではデジタルアーカイブを活用した一次史料分析が必修化されている。

学術支援体制

全生徒対象の「アカデミック・コーチング」プログラムを週2回実施。学習障害(LD)を持つ生徒には個別教育計画(IEP)を作成し、専門トレーニングを受けた教員5名が支援チームを構成。夜間学習サポート(Evening Study Hall)では大学院生チューターが常駐する。

学生生活と課外活動

ボーディング・ライフ

全生徒の75%が寮生活を送り、4つの寮(男子2・女子2)に分かれて居住。各寮に常駐する教員家族(Dorm Parents)が24時間体制で生活指導を行う。週末アクティビティとしてワシントンD.C.への文化研修旅行(月1回)や地域ボランティア活動が組み込まれている。

課外活動の多様性

46の公式クラブ活動を有し、特にロボティクスクラブはFTC(FIRST Tech Challenge)全国大会で3年連続入賞実績がある。芸術系プログラムでは、マサチューセッツ工科大学(MIT)と連携したデジタルアートカリキュラムを導入。音楽部門ではフィルハーモニーオーケストラが年4回の公演を実施している。

アスレチック・プログラム

9つの運動場と12面のテニスコートを有するスポーツ施設を活用。主要競技はラクロス(男子州大会優勝5回)、フィールドホッケー(女子全国ランキング10位)、テニス(全米ジュニア選手権出場者輩出)など。運動部参加率は85%に達し、週10時間のトレーニングが課される。

キャンパス環境

施設の特徴

14の学術棟と9つの運動施設が800エーカーの敷地に分散配置。歴史的建造物であるセント・ジェームズ教会(1845年築)を改修した図書館は、5万冊の蔵書とデジタルアーカイブを有する。自然科学棟には3Dプリントラボと低温物理学実験室を備える。

地理的利点

バルチモア・ワシントンD.C.各都市から75マイル圏内という立地特性を活かした教育プログラムを展開。連邦議事堂見学(年6回)、スミソニアン博物館共同研究(隔月)、ジョンズ・ホプキンス大学実験施設利用(年20日間)など、都市資源を活用した実践学習が特徴的である。

進路指導と大学合格実績

カレッジ・カウンセリング体制

専任カウンセラー3名が4年間の個別進路計画を作成。9年生から開始するポートフォリオ作成支援では、電子ポートフォリオシステムを導入。模擬面接(年5回)とエッセイ指導(週1回個別面談)を組み合わせた総合指導が特徴的である。

近年の進学先

過去5年間の卒業生進学先トップ10校は、プリンストン大学、シカゴ大学、ジョンズ・ホプキンス大学、ミドルベリー・カレッジなど。STEM分野進学者が45%を占め、リベラルアーツ・カレッジ志望者が35%という比率を示す。アイビー・リーグ合格率は過去5年平均18%を維持している。

卒業生ネットワークの活用

1,200名の卒業生会(Alumni Association)がインターンシッププログラムを運営。夏季休暇中に50以上の企業・研究機関で実務経験を積む制度を設けている。卒業生メンター制度では、業界別に200名の専門家が個別指導を実施している。

サービスラーニング

必修科目としてのコミュニティ・サービスプログラムを年間50時間以上実施。地元フードバンク運営(週3回)、退役軍人支援プロジェクト、環境保全活動など多様な活動を展開。2023年度には生徒主導の地域再生プロジェクトが州知事表彰を受賞している。

健康管理と学生支援

ウェルネス・プログラム

専属看護師2名と精神科医1名が常駐する保健センターを運営。マインドフルネス瞑想(週3回)、ヨガクラス(週2回)、栄養指導セミナー(月1回)を必修化。睡眠管理アプリを導入し、生徒の生活リズムをモニタリングしている。

ピアサポートシステム

上級生が新入生を指導する「ビッグ・ブラザー/シスター」制度を運用。4週間のオリエンテーション期間中に集中的なメンターシップを実施。生徒運営のカウンセリング・ホットラインでは、トレーニングを受けた12名の生徒が匿名相談に対応している。

危機管理体制

キャンパス内に24時間警備室を設置し、全建物に生体認証システムを導入。年4回の防災訓練(地震・火災・緊急避難)を実施。サイバーセキュリティ教育プログラムでは、MITの教材を活用したデジタルリテラシー教育を推進している。

国際的教育連携

オックスフォード大学教育学部と共同研究プロジェクトを推進。夏季休暇を利用した教員海外研修制度(年間10名)を設け、フィンランド・シンガポール・カナダの教育機関と相互交流を実施している。

財務援助と奨学金制度

学費

2024年度の年間学費はボーディング生$68,500、デイ生$48,20012。施設維持費$2,500、テクノロジー費$1,200が別途必要。学費の40%を財務援助プログラムに充て、平均援助額は$25,000である。

奨学金プログラム

学業優秀者向け「セント・ジェームズ・スカラーズプログラム」(年5名・全額免除)を筆頭に、15種類の奨学金制度を運用。アスリート奨学金(年3名)、アーティスト奨学金(年2名)、STEM女子奨学金(年4名)など多様な枠組みを設定している。

ICT基盤整備

キャンパス全域にWi-Fi 6Eを導入し、1Gbpsの超高速通信環境を構築。全生徒にSurface Pro 8を貸与し、デジタル・ポートフォリオ作成を義務付けている。仮想学習環境(VLE)プラットフォームではAIを活用した個別学習プログラムを提供。

STEM教育インフラ

3Dプリンティングラボ(Ultimaker S5 10台)、レーザーカッター(Glowforge Pro 5台)、CNCルーターを完備12。量子コンピューティング講座ではIBM Quantum Experienceを活用したクラウド演習を実施。ロボティクス研究室には産業用ロボットアーム(UR5e)を設置している。